転職したい人と中途採用したい企業…その両方に向けた広告、「ビズリーーーチ!」でお馴染みのビズリーチ。対象はもちろん「転職したい人」ですが、なんと「転職する気がない人」にも刺さる、その気がない人も「とりあえず登録だけしてみるか」と思ってしまう仕掛けがその広告に見られます。(※2023/7/6放送開始のCMです)
「市場価値を確かめてみる」「キャリアの健康診断」と謳い、あなたの価値はもっと高いのかもよ?と登録を促す、「転職する気がない人にも、登録してもらおう!」作戦
「な、なんて上手いんだ…」と初めて見たとき、しばらく絶句しました…
「認知」から「興味」までの大きな壁(マインドフローで考える)
まずは、マインドフロー(お客様が知ってからファンになるまでの心の動き)を見てみましょう。
1. 「へー、こんなの、あるんだ」と知って(認知)
2. 「これ、いいな」と興味を持ち(興味)
3. 「もっと知りたい!」と更に調べて(行動)
4. 「他にもあるかも?」と競合を探してみたりして(比較)
5. 「でも、やっぱりこれがいい!」と選んでくれて(購買や契約)
6. 実際に使ったりサービスを受けたり食べてみて(利用)
7. 「これを選んで良かった!」と満足する(愛情)
↑ 「認知」からゴールの「愛情」まで、お客様の心の動きを段階的に表したものが「マインドフロー」です。相手(お客様)はそれぞれの「関門」を通らないと先に進めないので、提供側(売り手側)は「どうすればその関門をクリアしてもらえるか」を考え工夫する必要があります。
そして全国展開するような大手企業には、大手ならではの課題があり、その一つが、「認知」してるけど「興味」が無い人にどうやって「興味」を持ってもらえるか?です。「興味」が無い人に「興味」を持ってもらうというのは至難の業で、ここに大きな壁があります。なぜなら、人は自分の中にあるもの(興味関心のタネ)にしか反応しないから。
この壁で止まっている人は
「知ってはいるけど、ニーズを感じず興味がない」
「知ってはいるけど、自分には関係ない」
という状態なので、いかに「ニーズを感じてもらうか」「自分事にしてもらえるか」が鍵となります。
特定の人を想定顧客とする「密着軸」の場合には、「認知」と「興味」はほぼ同時なので(※興味のある人しか認知してくれません)このような悩みはあまり発生しませんが、大手企業や「手軽軸」の場合は「一部の人が理解してくれたら、それでいいもんね~」というわけにはいきません。
「密着軸」「手軽軸」って何?という方は、こちら↓
ビズリーチが打った施策は?
ビズリーチは、「人」と「企業」をマッチングさせるのが目的なので、できるだけ多くの人に登録してもらう必要があります。一方で転職したい人は、複数のサイトに登録して条件に合う仕事を探すのが一般的なので、他のサイト(競合)をやめてこちらに来てもらう…といった増やし方は望めません。また既に多額の広告費を投入し「認知」を広めてきて、対象者はもうほとんどが知っている状況の中、さらに「認知」してもらうのは難しそうです。
そこで、打った施策が、
「転職する気がない人にも、登録してもらおう!」作戦
私が勝手に命名…
具体的には、「市場価値を確かめてみる」「キャリアの健康診断」と謳って、
転職する気がないあなたも、今の仕事と待遇に満足してるあなたも、キャリア市場でのあなたの価値をちょっと見てみませんか?ひょっとしたらあなたの価値はもっと高いのかもよ?実際に8割以上の人がそのために利用してますよ、登録はもちろん無料!登録はこちら…(ネット上には、ポチっと押したくなるボタンを配置)
↑※要約するとこんな感じ
と、「興味」から「行動」までの誘導もバッチリ!
TV用のCMでは、「みんなやってるよ!」的な日本人向けの殺し文句(⁉)まで使って、「価値を確かめる行動」(←登録)を促しています。
眼鏡をかけない人にも眼鏡を売る
他にも似たようなケースで、「眼鏡をかけない人にも眼鏡を売る」ことに成功した事例もありました。眼が悪くない(眼鏡を必要としない)人に対して「ブルーライトから眼を守ろう!」と訴求し、
(眼鏡というモノは)知っているけど、自分には関係ない
という人に「興味」を持ってもらい「購買」までつなげた事例ですよね。今やブルーライトは誰もが知る言葉となりました。
現代ではモノや情報が溢れ、「自分にとってニーズを感じるもの」「自分に関係あるもの」以外は記憶に留めることすら少ないと言えるでしょう。そんな中で、「あ、やっぱり関係あるかも?」と興味を持ってもらうビズリーチの施策には、もう本当に脱帽!です。思わず私自身も「私の市場価値、いくらだろう?」と、ポチっと確かめたくなりました。(いや、しませんけど、年齢的にもアレですし…)
すごいな、ビズリーチ。
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